機能外科・再建外科
顔面けいれん
顔面けいれん(片側顔面けいれん)は、顔の片側の筋肉が意図せず収縮し、ピクピクとけいれんする疾患です。初期はまぶたの痙攣(眼瞼けいれん)から始まり、徐々に頬や口元へと広がることが多いです。発作的に起こるものの、次第に持続的な症状となる場合もあります。
顔面けいれんの主な原因は、顔面神経(第VII脳神経)が脳内の血管に圧迫されることによって起こると考えられています。その他の原因として、以下のようなものが挙げられます:
- 神経血管圧迫(動脈が顔面神経を圧迫することで発症) (Fig.1)
- 脳血管障害(小さな脳梗塞や動脈瘤)
- 顔面神経の損傷や炎症(ベル麻痺の後遺症など)
- 稀に腫瘍や神経疾患(聴神経腫瘍、多発性硬化症など)
Fig.1 左顔面けいれん:微小血管減圧術
顔面けいれんの症状は、以下のような特徴があります:
- まぶたの痙攣(最初は軽度で、ストレスや疲労で悪化)
- 頬や口元のピクピクする動き
- けいれんが持続するようになると、顔の筋肉が硬直することも
- 緊張時や話すときに症状が悪化
- 重症化すると、顔の左右バランスが崩れることも
顔面けいれんの診断には、以下の検査が行われることがあります:
- 神経学的診察(けいれんのパターンを評価)
- MRI検査(脳血管の圧迫や腫瘍の有無を確認)3D構成が有用です (Fig.1)
- 造影CT検査:
- 手術を行うにあたり、静脈を含めた後頭蓋窩解剖の詳細が必要です
顔面けいれんの症状は、以下のような特徴があります:
- 1) 薬物療法
抗けいれん薬(カルバマゼピン、クロナゼパムなど)が有効な場合がある - 2) ボツリヌス毒素注射(ボトックス療法)
けいれんを引き起こす筋肉の収縮を一時的に抑える効果は3~6ヶ月間持続し、繰り返し治療が必要 - 3) 手術(微小血管減圧術:MVD) (Fig.1)
圧迫している血管を移動させる、または神経を絶縁させることで症状を根本的に改善有効率が高く、多くの患者さんが長期的な改善を実感
顔面けいれんは、生活の質に大きな影響を与えますが、適切な診断と治療で症状を改善することが可能です。患者さんの状態に応じた選択肢を検討します。症状が気になる方は脳神経外科を受診することをおすすめします。
聖マリアンナ医科大学 脳神経外科では、専門医による的確な診断と治療を提供しております。最新の技術を活用し、安全かつ低侵襲な治療を心がけています。ご相談や診療をご希望の方は、お気軽に当院までお問い合わせください。
三叉神経痛
三叉神経痛は、顔の感覚をつかさどる三叉神経(第V脳神経)が刺激されることで、突然強い痛みが生じる疾患です。痛みは片側の顔面に発生し、特に頬、あご、目の周囲などに現れることが多く、「電気が走るような」「焼けつくような」鋭い痛みが特徴です。
三叉神経痛の主な原因は、血管による神経の圧迫です。その他にも、以下の要因が関与することがあります:
- 神経血管圧迫(血管が三叉神経を圧迫し、神経が過敏になる)(Fig.2, Fig.3)
- 脳腫瘍(神経の周囲に異常な圧迫が生じる)
- 多発性硬化症(神経の髄鞘が損傷し、痛みが発生)
- 外傷や手術後の影響
- 突然の激しい顔面痛(数秒から数十秒間続く)
- 食事・歯磨き・会話・風に当たると痛みが誘発される
- 痛みが出る側の顔面のこわばり
- 発作的に痛みが繰り返され、徐々に頻度が増す
三叉神経痛は、患者の症状の特徴から診断されることが多いですが、正確な診断のために以下の検査が行われます:
- MRI検査(血管の圧迫や腫瘍の有無を確認) 3D構成が有用です (Fig.2)
- 神経学的診察(顔面の感覚異常や反射の評価)
- 痛みの部位と特徴の確認
三叉神経痛の治療には、薬物療法・神経ブロック・手術などの選択肢があります。
- 薬物療法
抗けいれん薬(カルバマゼピン)、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン、ミロガバリンなど) - 手術療法(微小血管減圧術:MVD) (Fig.3)
圧迫している血管を移動させ、神経への刺激を取り除く手術
根本的な治療法として有効性が高い
原因血管が不明なときは、コーミングとよばれる神経脱刺激手術を加えることがあります - その他
神経ブロック療法、ガンマナイフ(定位放射線治療)
手術が難しい患者にも適応可能だが、顔面が痺れる場合がある
Fig.2 左顔面痛(三叉神経痛)
Fig.3 三叉神経痛:微小血管減圧術
三叉神経痛は、強い痛みにより日常生活に大きな影響を与える疾患ですが、適切な治療によって症状のコントロールが可能です患者さんの状態に応じて最適な治療を検討します。症状が気になる方は、早めに脳神経外科を受診することをおすすめします。
聖マリアンナ医科大学 脳神経外科では、専門医による的確な診断と治療を提供しております。最新の技術を活用し、安全かつ低侵襲な治療を心がけています。ご相談や診療をご希望の方は、お気軽に当院までお問い合わせください。
顔面神経再建
顔面神経の役割と損傷について
顔面神経(第VII脳神経)は、顔の表情を作る筋肉を動かす重要な神経です。この神経が損傷すると、顔の片側または両側の筋肉が動かなくなり、顔面神経麻痺が発生します。顔の表情が作れなくなるだけでなく、まぶたが閉じられず角膜が乾燥する、口が閉じられず食べ物や水分が漏れるなど、日常生活に大きな影響を与えます。
顔面神経麻痺は以下のような原因で発生します:
- 外傷(事故、手術による神経損傷)
- 腫瘍(聴神経腫瘍、耳下腺腫瘍の摘出後)
- 感染症(帯状疱疹によるラムゼイ・ハント症候群)
- 脳卒中
- 先天的な顔面神経の欠損
顔面神経が完全に損傷した場合、神経の自己修復が期待できないことがあります。このような場合、顔面神経再建術を行い、顔の機能を回復させます。再建の方法には、損傷の程度や患者の状態に応じてさまざまな手術が選択されます。
Fig.4 機能的顔面神経再建:舌下神経ー顔面神経吻合術
顔面神経再建には、主に以下の方法があります。
- 1) 神経縫合術(直接縫合) 顔面神経が損傷しているが、切断された神経の端同士が近く、直接縫合できる場合
- 2) 神経移行術・神経移植術(神経グラフト) (Fig.4) 顔面神経の回復が見込めないが、他の脳神経が正常に機能している場合、その神経を利用して、顔面神経を機能させる方法 舌下神経ー顔面神経吻合術:舌の動きを司る舌下神経を顔面神経に接続する方法 (Fig.4) 損傷または離断後、2年程度まで適応されますが、3ヶ月以内での手術がより有効です。
以下は形成外科にて施行されます
- 3) 交叉神経移植術(クロスフェイス神経移植)
- 4) 筋腱移植術
- 5) 表情筋静的再建術
顔面神経麻痺は日常生活に大きな影響を与えます。
聖マリアンナ医科大学 脳神経外科では、頭蓋内病変に関連した顔面神経麻痺に対して、積極的に神経再建術を行っています。ご相談や診療をご希望の方は、お気軽に当院までお問い合わせください。