ご挨拶
本学は1971年に川崎市宮前区に創立、開学し、昨年50周年を迎えました。脳神経外科は1995年に第二外科の脳神経外科部門から独立し、初代 故関野宏明教授(1995年着任),第2代 橋本卓雄教授(2003年着任),第3代 田中雄一郎教授(2013年着任)を経て、私が第4代目(2022年4月着任)となります。大学病院は聖マリアンナ医科大学病院 本院(川崎市宮前区)のほかに、聖マリアンナ医科大学附属横浜市西部病院(三ツ境)、東横病院(武蔵小杉)、川崎市立多摩病院(登戸)の大学附属病院を有し、川崎市、横浜市での脳神経外科診療を有機的に行っています。附属グループ全体で年間1700件の手術を行っています。
脳神経外科では(1)脳腫瘍、(2)脳血管障害、(3)脊髄外科、(4) 機能的疾患、 (5)頭部外傷、 (6)小児先天奇形の6分野を中心に治療・研究をおこなっています。一般脳外科疾患や救急疾患はもとより、大学病院でしかできない希少疾患や高難度手術がメインになっているのが特徴で、本院で年間400例超の手術を行っています。
脳腫瘍では、覚醒下手術をはじめとしたモニタリングやナビゲーションなど用い、安全かつ摘出率の向上に効果をあげています。また治療の難しい脳深部や頭蓋底腫瘍も多く紹介され、顕微鏡手術を駆使するとともに、内視鏡、外視鏡などの先進的なモダリティを用い安全かつ効率的な摘出を行っています。間脳下垂体腫瘍では当院内分泌疾患センターと共に密な協力体制のもと最適な医療を提供しています。
血管障害は包括的脳卒中センターとして脳神経内科と共に急性期治療を行っています。血管外科、血管内治療ともに指導医、認定医のエキスパートを配し、あらゆる血管障害に対応可能です。血管内治療も年間100例を超える豊富な経験を有しています。
救急疾患においては、神奈川県で最初に開設された救命センターを有し、救命救急科と共に脳卒中や頭部外傷などの神経救急の最後の砦として治療に当たっています。
脊髄外科では、私の着任以降、主に脊髄腫瘍や脊髄血管障害、先天奇形等を中心に紹介が急増しており、脊髄治療のメッカとなりつつあります。
機能的疾患では、2017年にてんかんセンターが開設され、翌年神奈川県てんかん診療拠点病院に指定されました。現在全国でも有数のハイボリュームセンターです。脳深部刺激療法も、パーキンソン病治療センターを有し脳神経内科との協力体制のもと、積極的な治療に取り組んでいます。
小児神経外科分野では、総合母子周産期医療センター及びこどもセンターと連携し、胎児期からの一貫した診療体制を整えています。
このような充実した臨床背景をもとに、様々な基礎的および臨床研究が行われています。頭部外傷の基礎的並びに臨床的研究は第二外科の頃からの教室の主要研究テーマでした。脳血管障害では脳血管攣縮治療、脳虚血におけるフリーラジカルの研究、脳腫瘍では悪性腫瘍における高気圧酸素療法併用の集学的治療などオリジナリティの高い研究がされてきました。また近年では、基礎医学教室との共同研究でES細胞やiPS細胞による神経再生や脳腫瘍浸潤に関連する蛋白質研究なども積極的に行われ、先進治療に貢献しています。
聖マリアンナ医科大学 脳神経外科では、市民・県民の皆様、脳・神経疾患で闘病を続けている方、医学生や医師、医療関係者の方々に、診療、研究、教育活動を通じてお役にたてるよう、教室員一丸となって邁進して参ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。